回復期病棟に勤務して働いて思うこと

高齢者や高次機能障害のある人の運転免許について

最近、高齢者の車の事故の報道を本当によく聞きますよね。しかも、単独事故でなく、他の人を巻き込んだショッキングな事故が連日のように報道されるので本当に怖いです。うちの病棟に事故で入ってきた患者さんも高齢者にバイク引っ掛けられたとか、巻き込まれたという人が多いようですし。超高齢化社会目前ですもんね。

運転免許問題って、年齢では区切れないから難しいですよね…。人によって本当に違うから。それでも、高齢になれば判断力や反射神経も落ちているので、いくらしっかりしていても若い人と比べれば当然リスクは上がります。とはいえ、「高齢者の運転は怖い」と漠然と思いながらも、今の病棟で働いていなければそこまでの恐怖感は感じなかったと思うんですよね。

最近、本当に怖いなと思うのが、患者さんの家族。高齢な患者さんが多いということは、必然的にご家族も高齢なわけです。そうすると、入院や入所していないけれど認知症バリバリっていうご家族も面会にいらっしゃいます。バリバリだけど、自分の認知症を認識していないご家族もたくさんいらっしゃいます。見た目では認知症があるかはわからないですから、実際に関わってみると本当に怖くなるんですよね。

この前、患者さんの奥様が自分の貴重品入りのバッグを食堂に置き忘れて、それを部屋に戻ってしまったご本人に渡したところ、「これ何ですか?誰の?」とキレ気味に言われ、押し問答になったことがありました。結局はちょっとしたら思い出して、持って帰っていただけたのですが。また別の日には、車で来院されたのか確認したところ、「私、車で来ていませんけど!」と、結構強めに返されたのですが、結局車でいらっしゃっていて、帰宅途中で思い出して戻ってこられたり。
他にも、病院までは車で来られるけど、退院までの5ヶ月間ほぼ毎日面会で来られていたにもかかわらず、毎回1階で迷子になりまくってから上がってこられて、さらに病棟でも迷っているご家族とか。毎回バイクで面会に来られていて、ある日バイクを忘れたまま患者さんとタクシーに乗って無断帰宅してしまったご家族とか。

小さな病棟ですら、毎回面会に現れると「よかった。無事にたどり着けたんだな。」と安心してしまうくらいのご家族がちょくちょくいらっしゃるので、世の中には不安になってしまうドライバーさん達がもっともっといるんでしょうね。

歩いていて、人同士でぶつかるならどうってことないですが、車に乗ってしまうとスピードも出ているし、人を巻き込んでしまったり、怪我をしたり、色々な危険を伴うことをもっと理解して、周囲の方たちも止めてあげることが必要なのではないかと思います。うちの母は元々運転が下手だったこともあり、数年前に60台前半で免許を返納してしまっているので加害者にならないという点では安心なのですが、旦那さんのご両親は田舎の方なのでバリバリに乗っています。ただ、お義父さんも70を超えたので、今後考えていかなくてはいけないんだろうなぁと思います。

あと、高齢の方もそうなのですが、回復期病棟では脳疾患の方も多く入院してくるので、比較的若い患者さん達は運転を再開したいという希望もあり、病状説明時に話し合いになるケースも多いです。脳疾患の大変なところは麻痺もそうなんですが、見た目でわからない高次機能障害。注意機能が落ちたり、半側空間無視があったり、失行があったり。ご本人が危機感があればいいんですけど、楽観視してしまう患者さんも時々いるので、届出や検査が必要と知って社会的にそんなに不安視されるのかとショックを受ける患者さんもいます。

脳疾患後の患者さんが免許更新をしたい場合、まず患者さんがもらってきた書類に主治医が診断を書きます。そして、その診断書を運転免許試験場に持って行って、適性検査などを受けて、合格すれば晴れて免許更新となるようです。先生いわく、診断書はてんかんを起こしやすいか否かが一番問題になるようです。それもなんとも言えないなーと思うんですけどね。運転って複雑な情報を瞬時に判断して進めていくものだから。それとも、先生がその診断書を書く時点でそれなりに高次機能障害は大丈夫な状態だろうという判断なのでしょうか。まぁ、適性検査があるので、危ない人はそこで引っかかるんでしょうけど。

ちょっと調べてみたら、医師が任意で公安委員会に診察結果を届けられたり、罰金などの制度の強化があったみたいなのですが、今の制度では退院後に更新まで日がある場合は、よくわかってなくて運転してしまう人もいるんじゃないかと思ってしまうんですけど、私が調べ切れていないだけでその対策もあるんでしょうかねー?

高齢者でも高次機能障害がある人でも、ドライバーとしてしっかりされている方もたくさんいるわけだし、一括りにしてしまってはもちろんいけないし、偏見を持ってはいけないのですが、一部の人が歩道まで乗り上げてきたり、店に突っ込んできたりということを思うと、一歩行者として、子を持つ親として、やっぱり不安。制度や検査にもまだまだ改善点がいっぱいあると思うので、机上での話し合いだけでなく、一般の人や医師や看護師、言語聴覚士などの現場の声も汲み上げて、きちんとしていってほしいものです。そして最近の自動車の技術の発展は本当にすごいですから、そちらからも事故をどんどん防いでいってほしいですね。あと、運転があまりうまくない私としては、バイクや道路を走る自転車を巻き込まない技術の開発をもっとお願いしたいところです。毎回、怖くて怖くて、軽く叫びながら抜かしてますから。でも、渋滞してるから何度も抜かされちゃってがっかりするのよね。車幅のラインが地面に投影されるとか。バイクや自転車的にも「このままじゃ、オレ、轢かれるな。もう少し端に寄るか。」みたいな。…ダメ?自動車の開発に関してはプロにおまかせした方がよさそうかしら。

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